2021年03月27日開催 第37期11回研究会「次世代セッション―修士論文インターカレッジ報告会」(次世代委員会) JISEDAI (Next Generation) Session: Master's Thesis Intercollegiate Debriefing

日本マス・コミュニケーション学会次世代委員会では、初めての試みとして、これからマス・コミュニケーション研究やメディア研究などの領域で活躍が期待される次世代の研究者や実務家にご報告いただく、修士論文報告会を開催します。大学院に提出した修士論文のアブストラクト、あるいは口頭試問のレジュメなどを用いて、研究の概要をご報告いただいたうえで(=20分)、参加者との質疑応答(=10分)、さらに建設的な意見交換や会員との交流をおこないます。

このたび11名の方にご発表いただきますので、ぜひご参加ください。非会員の方も歓迎です。

■ 日時:
2021年3月27日(土)13:30〜17:30

■ 方法:
Zoomによるオンライン開催

■ ご参加方法:
事前申込が必要です。参加をご希望の方は、3月26日(金)17時までに、次世代委員会・飯田(jisedai@iida-lab.org)までメールで、ご氏名・ご所属をお知らせください。3月26日(金)17時以降、接続情報などをお送りします。

■ プログラム:

 Room ARoom B
13:30-13:45オープニング(報告会の趣旨説明、発表者の自己紹介など) 
13:45-14:15犬飼俊介(早稲田大学大学院 政治学研究科)
「NHK 国際放送への「追加命令」はいかにして決定されたのか――2007 年放送法改正に至る「有識者会議」の議論を中心に」
水谷珠美(情報科学芸術大学院大学[IAMAS]メディア表現研究科)
「作品《ゆめの中継; 状況の上書き1》にみる、エフェメラルなメディア・イベントの可能性――スマートフォンを用いた生中継が美術館にもたらした自由なコミュニケーション」
14:15-14:45金子恵美(社会情報大学院大学 広報・情報研究科)
「新聞社に信頼をもたらすコーポレート・コミュニケーションのあり方――アクセス・ポイントの視点から」
三木悠尚(情報科学芸術大学院大学[IAMAS]メディア表現研究科)
「OFAD Media Project : 『全周観察型立体ディスプレイ拡張プロジェクト』の展開とその可能性についての考察」
14:45-15:15陳晗(立命館大学大学院 人間科学研究科)
「フェイクニュースに対する警告タグがニュース信憑性に与える影響――SNS上の他者の反応に注目して」 
藤田政徳(東京大学大学院 学際情報学府)
「メディア論から「わざ」を問い直す――躰道におけるオンライン稽古を素材として」
15:15-15:30休憩
15:30-16:00青山俊之(筑波大学大学院 人文社会科学研究科)
「自己責任ディスコースを構築するラベリングとフレーミングの記号過程――イラク日本人人質事件の初期報道に着目した言語人類学的分析」
楊雅韻(京都大学大学院 文学研究科)
「戦後日本の男性化粧に関する言説の分析」 
16:00-16:30蓼沼阿由子(放送大学大学院 文化科学研究科)
「デジタルメディアと政党組織――ネットワーク化が組織に与える影響」
萇穎(早稲田大学大学院 教育学研究科)
「テレビドラマに見るセクシュアル・マイノリティの表象――ゲイの描かれ方を中心に」
16:30-17:00塚原真梨佳(立命館大学大学院 社会学研究科)
「戦艦建造技術をめぐるテクノ・ナショナリズム言説構築の歴史社会学的研究」
 
17:00-17:30参加者交流会 

開催記録

記録執筆者:大尾侑子(桃山学院大学)

報   告:

このたび、次世代委員会による初の試みとして、将来のマス・コミュニケーション研究、メディア研究などの分野で活躍が期待される次世代の研究者、および実務家にご報告いただく機会を設けるという趣旨のもと、修士論文報告会を開催した。

事前の募集により、非会員を含む11名の方が発表者。次世代委員の全員(飯田豊会員、大澤聡会員、太田美奈子会員、大尾侑子会員、金暻和会員、佐藤彰宣会員、新藤雄介会員、水出幸輝会員、村田麻里子会員)を含む、40名以上の方にご参加いただいた。

定刻の13:30より、発表者・次世代委員の自己紹介がおこなわれ、13:45より報告会がスタートした。プログラム前半(13:45〜14:45)は、【Room A】、【Room B】それぞれにて3名が発表。休憩(15:15〜15:30)を挟み、後半には【Room A】で3名、【Room B】で2名が発表をおこなった。司会者は次世代委員会が務めた(【Room A】前半は大澤会員、後半は水出会員、【Room B】前半は村田会員、後半は金会員)。ルーム間は参加者が自由に移動できるよう設定した。

発表者は各自、大学院に提出した修士論文のアブストラクトや口頭試問用のスライド資料、レジュメなどを用いて報告(20分)をおこない、次世代委員会メンバーを含む参加者との質疑応答(10分)をおこなった。マス・コミュニケーション研究ばかりでなく、メディア・アート、人類学など広い射程を持つ、充実した発表が続いた。

全体の報告が終了したのち、参加者交流会をおこない、総括コメントを交わした。発表者からは、「リモートにより遠方からの参加のハードルが下がった」、「社会人院生にとってゼミ生と議論する機会が少ないなか、ありがたい機会となった」、「博士課程に進むうえでのアドバイスやコメントが得られた点が良かった」、「就職する立場上からも4月以降ではなく、年度内開催で助かった」、「留学生という立場上、修論執筆後すぐに学会発表をすることはハードルが高く、今回は良い機会となった」、「20分という発表時間が今後の学会発表に挑むうえで練習になった」といった好意的な感想が寄せられ、次年度以降の開催も希望するとの声が目立った。

一方で、冒頭では自己紹介だけでなく、報告会全体の趣旨や全体の方向性について情報共有する時間を設けるべきではないか、とのコメントも寄せられた。またフロア討論と交流会の時間をそれぞれ延長し、より活発に意見交流をおこないたいとの意見もあり、改善点も明るみに出た。なお、途中に発表者の接続が切断される回線トラブルが発生した。次回以降は、こうした前例を踏まえ、あらかじめ主催者と発表者のあいだでトラブル時の対処法について情報共有しておく必要がありそうだ。

以上、本会は初の修論報告会という試みであったにもかかわらず、50名を超える事前の参加申し込みがあり、当日も40名以上の方にご参加いただいた。次世代研究者によるバリエーション豊かな研究報告への関心の高さや、学会大会とは異なる研究発表の場に寄せられた期待の現れだろう。また日本マス・コミュニケーション学会の名称変更に関する議論が喚起された背景として、本学会への若手研究者の参入障壁の高さや、対象とするディシプリンの外縁をいかに設定すべきかを巡る問題提起がなされてきたが、修論報告会はこうした課題を解決する一つの糸口になりうるのではないか。

今回の報告会を跳躍台として、ご発表いただいた方々の今後の研究がますます実りあるものとなり、そして学会活性化の一助となれば幸いである。参加いただいたすべての皆さまに感謝申し上げたい。