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第32期第6回研究会「テレビ・コマーシャルの考古学──昭和30年代を問い直す」(メディア史研究部会)終わる

日 時:2010年3月13日(土) 14:00~17:30
場 所:関西学院大学 大阪梅田キャンパス 1408教室
問題提起者:高野光平(茨城大学)
      辻 大介(大阪大学)
討論者:岡田朋之(関西大学)
司 会:難波功士(関西学院大学)
参加者:17名
記録執筆:難波功士

京都精華大学には、CM制作プロダクションなどからの委託をうけて、民間テレビ放送初期からのテレビCM映像が多数デジタル化され、データベースとして整理・保存・管理されている。長らくデータベースの構築とその分析にたずさわってきた高野光平会員より、まず本データベースの全体像の紹介があり、1960年代初頭に今日にいたるテレビCMのフォーマットができあがった点、そのことはテレビCMをめぐる広告ビジネス上の商慣行、さらには民放の産業的な構造の確立を意味するものである点などが報告された。次いで本データベースをもとに、CMに使用された言語の分析を行った辻大介会員より、語彙・言語密度や発話者のジェンダーなどの点で、やはり1960年代初頭がCM表現の大きな画期であり、広告主の代理であるタレントが視聴者に語りかける(歌いかける)様式から、CM表現の中に視聴者の代理である消費者像が描かれる様式への転換期にあたるのではないかとの報告があった。

それらの報告を受けて、データベースに今回始めて接する立場から岡田朋之氏にコメントをいただいた。新しいメディアが社会に定着するプロセスに共通するパターンがここにも見られ興味深いとの感想がまずあり、さまざまなコンテンツのアーカイブ化の際には、そのインターフェイスなど視聴・使用のコンテクストをどこまで保存・再現可能かはつねに問題になるとの指摘があった。その後フロアからも、CMをアーカイブ化する際の留意点、それを公開・利用する際の権利関係の問題、またテキスト分析にかける際に注意すべき点などの質問があった。それらを受けて、他でもCMの映像や音声のデジタル化・データベース化の動きが進展している例が紹介され、データベースでのCM視聴が当時のブラウン管の前でのそれとは異なる点をどう考えるのか、初期テレビCMのインターテクスチュアリティ等々について意見が交わされた。発表者・出席者ともに、昭和30年代にはまだ物心がついていない、ないしは生まれていない世代がほとんどであったが、にもかかわらず(もしくはそれゆえに)約半世紀の時を経た映像群に新鮮な驚きと新たな研究の可能性を感じることのできた研究会であった。

なお京都精華大学全学研究センター・テレビCM研究会では、本データベースにもとづく研究成果を近々公刊予定である。